犬のヘルニアとは?ヘルニアの症状や治療方法、再発防止方法を解説!
犬のヘルニアの種類
ヘルニアとは『臓器がズレて正しい場所から外れてしまった状態』のことを指します。
犬のヘルニアには様々な種類があるので、それぞれ紹介していきます。
椎間板(ついかんばん)ヘルニア
骨と骨の間でクッションのような働きをしている椎間板が、激しい運動や老化など何らかの原因でズレてしまい、神経を圧迫する状態を『椎間板ヘルニア』と呼びます。
犬の体の構造上、胸や背中、首などに発生しやすいトラブルです。
神経が圧迫され麻痺した状態が数日続くと、細胞が壊れてしまい、修復できなくなってしまいます。
ヘルニアの疑いがあるときには、放置をせずに、すぐにかかりつけ医を受診しましょう。
鼠経(そけい)ヘルニア
足の付け根である鼠経部の構造がズレてしまい、本来はおなかの中に納まっている膀胱などの臓器が飛び出してしまう状態を『鼠経ヘルニア』と呼びます。
飛び出た臓器は皮膚で覆われているため、足の付け根にぽこっとした膨らみが現れます。
遺伝など先天的に起きるケースや、事故などの外傷によって発生することが多くなっています。
臍(さい)ヘルニア
臍とは『ヘソ』のことですが、胎児のときに母親と繋がっていた部分が先天的な理由で上手く閉じず、そこから臓器が出てきてしまうことを『臍ヘルニア』と呼びます。
生後1か月の間に治ることが多いですが、治癒しないときには、去勢・避妊手術などのタイミングで一緒に治療することが推奨されています。
横隔膜(おうかくまく)ヘルニア
胸と腹部の間にある横隔膜に穴が開いてしまい、おなかの中にあるべき臓器が、胸の中に移動してしまう状態を『横隔膜ヘルニア』と呼びます。
先天的な理由で発生することが多く、チワワやテリアなどの小型犬によくみられる症状となっています。
ヘルニアの原因
ヘルニアになってしまう原因には、どのようなものが考えられるのでしょうか。
先天的な理由
生まれつきヘソや横隔膜などに穴が開いていて、ヘルニアになるケースがあります。
臍ヘルニアの多くは、生まれてすぐに症状が現れ、成長が進むにつれて穴は自然と閉じることが多いようです。
先天的なヘルニアは、身体の構造上コーギーやダックスフントなど、胴長の犬種に多いと言われています。
後天的な理由
生まれた時は問題がなくても、成長していくにつれて発症するケースもあります。
椎間板ヘルニアは、事故にあったり、激しい運動を繰り返したときなどに、体の構造がズレることで発生しやすくなっています。
老化も原因の一つに
老化によって、ヘルニアを発症することもあります。
こちらは、若いころから蓄積された、椎間板にかかる疲労が原因となっているようです。
椎間板ヘルニアのグレード
一般的な椎間板ヘルニアは、症状ごとにグレード分けがされています。
グレード | 症状 |
1:痛み | 触れられたり、抱かれたりするのを嫌がる |
2:ふらつき | 後ろ足が弱くなるも、ふらつきながら歩くことができる |
3:起立不能 | 後ろ足が麻痺し、自立歩行ができなくなる。つねられたら痛みがわかる程度の麻痺のため、自分の意思で排尿ができる |
4:排尿困難 | 後ろ足の麻痺が進み、つねられても感覚がなくなるため、失禁が増える |
5:感覚消失 | 後ろ足が完全に麻痺し、強い痛みも感じない状態のため、回復率は限りなく低くなる |
このようなグレードに応じて、必要な治療や自宅でのケアをすることになります。
犬のヘルニア治療
愛犬が椎間板ヘルニアになってしまったとき、主な治療法として、外科手術、内科治療(薬を与える)、安静などの治療法があります。
手術に至る場合、入院日数も長くなり、治療費もぐっと上がります。
具体的にどのような治療になるのか、それぞれご紹介していきます。
内科治療
ヘルニアを早期に発見できて、麻痺が進行していない状態、つまり痛みが出てきた段階であるグレード1では、内科治療で落ち着くことがあります。
具体的には、ステロイドなどの薬を飲むことで炎症箇所を抑えつつ、激しい運動や患部へ負荷のかかる動きを制限して、脊椎機能の修復を目指します。
目安としては約8週間程度の安静期間が必要となり、根気強いサポートが必要となります。
根本的な問題を取り除く方法ではないため、再発のリスクも高く、治療後も運動量を抑えるなどの配慮が必要です。
外科手術
麻痺の進行が早く、グレードが上がるにつれて手術の必要性も出てきます。
具体的には、グレード3以降の中程度から、5泊程度の入院を伴う手術が必要となります。
全身麻酔の手術となるため、犬の体への負担は大きくなります。
その分、高い回復率が見込めるため、リハビリの後は今まで通りの生活に戻る効果が期待できるでしょう。
入院&治療費用は?
気になる入院・治療に伴う費用は、病院によって異なってきます。
一般的には、5日程度の入院・MRIを含む各種検査・手術などをすべて含めて、約30万円程度かかると言われています。
ヘルニアの改善・再発防止
一度なってしまうと、再発が怖いヘルニアです。
ここでは具体例を交えながら、再発予防を徹底するにはどうしたらいいのかを見ていきましょう。
体重管理をする
犬の椎間板ヘルニアを防止するために、一番最初にできることは肥満を避けることです。
体重が重くなりすぎると、その分、腰に負担がかかります。
さらに動くことが億劫となり、筋肉がしっかりと使われずに弱っていきます。
食事内容を見直し、適切な運動量を確保することから始めてみましょう。
▼犬の食べ過ぎ対策についての記事はこちら
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家の中で転ばないようにする
犬の老化が進んでくると、小さな段差でも躓いて転んでしまうことがあります。
ヘルニア持ちの犬は、ちょっとした躓きが体のズレにつながり、再び神経が圧迫されてしまう恐れがあります。
スロープを付けたり、ソファーには登らせないようにするなど、転びにくい環境を整えてあげましょう。
家の中で滑らないようにする
転倒ほどの大きなトラブルではなくても、フローリングで滑るだけでも犬の関節に負担がかかり、再発につながってしまうことがあります。
カーペットや滑り止めマットを敷くなどして、再発防止に努めましょう。
激しい運動を控える
体重管理のためにも適度な運動は重要ですが、激しい運動は危険です。
腰に負担のかかる激しい運動、ジャンプなどは控えるようにしましょう。
犬のヘルニアにいい食べ物
椎間板ヘルニアを発症してしまった犬は、治療で症状が治まった後も、生活面でのケアが必要です。
なぜなら、以前と同じ生活習慣を繰り返していると、再発のリスクが高まるからです。
その中でも特に注目していきたいのが、毎日の食事です。
ヘルニア持ちの愛犬には、どのようなドッグフードを与えるのが推奨されているのでしょうか。
低カロリー・低脂肪
ヘルニアの大きな敵は肥満です。
体重が重くなることで、体を支えている首や腰など、ヘルニアが発症しやすい場所へ負荷がかかってしまいます。
低カロリー・低脂肪の食事にしたり、食べる量を減らすなどして、体重管理をしっかりすることが第一です。
▼ダイエットの食事管理についての記事こちら
高たんぱく質
体をしっかりと支えられるように、犬もしっかりと筋肉をつけていく必要があります。
特に手術明けや、安静期間を過ごしていた犬は、体力とともに筋肉も落ちてしまっています。
肉や魚からたんぱく質を積極的に摂取し、適度な運動で鍛えていきましょう。
関節や軟骨ケア成分
ヘルニア持ちが特に意識していきたいことは、関節や軟骨への栄養補給です。
- グルコサミン
- コンドロイチ
- ヒアルロン酸
- コラーゲン など
グルコサミンやコンドロイチンは、骨や軟骨を強くしたい時、ヒアルロン酸やコラーゲンは、関節をスムーズに動かすために効果的です。
サプリメントを食事に追加するなどして、積極的に取り入れましょう。
▼犬の栄養バランスについての記事はこちら